外場応答性イオン液体
Functional Ionic Liquids

 イオン液体とは、イオンのみから構成され、幅広い温度範囲で液体として存在する低融点の塩です。これらは難揮発性、難燃性、高イオン伝導性といった、水や有機溶媒のような分子性液体とは異なる性質を示します。

 私達の研究室では、熱や光、小分子などの外部からの刺激に応答する有機分子を用いたイオン液体の開発に取り組んでいます。このような外場応答性イオン液体は、イオン液体由来の特徴ある性質と、分子の個性でもある機能を兼ね備えており、塗布や噴霧が可能な新しい液体材料の応用可能性を秘めています。

 これまでに、光照射によって可逆的に構造・色変化(フォトクロミズム現象)を示すイオン液体や、蒸気・ガス吸収を可視化できる液体、光と熱で高分子固体との相互変換が可能な液体などを見出しています。


Selected Publications

フォトクロミックイオンからなる光応答性イオン液体・結晶・フィルムの開発
舟浴 佑典, 溶融塩および高温化学, 2022, 65, 63–67.

Photochromic Ionic Liquids Containing Cationic Spiropyran Derivatives
Y. Funasako, H. Okada, M. Inokuchi, ChemPhotoChem, 2019, 3, 28–30.

Reversible transformation between ionic liquids and coordination polymers by application of light and heat
Y. Funasako, S. Mori, T. Mochida, Chem. Commun., 2016, 52, 6277–6279.

Vapochromic Ionic Liquids from Metal-Chelate Complexes Exhibiting Reversible Changes in Color, Thermal and Magnetic Properties
Y. Funasako, T. Mochida, K. Takahashi, T. Sakurai, H. Ohta, Chem. Eur. J., 2012, 18, 11929–11936.





外場応答性結晶
Ionic Soft Crystals

 結晶と聞くと、固くてもろいイメージがあるかもしれません。

しかし、緻密に設計された有機分子・イオンの結晶では、光や熱などの刺激によって分子が回転・屈曲・結合切断/生成などの構造変化を示します。このような分子レベルのミクロな変化は、結晶全体のマクロな変化へと変換され、クロミック現象やメカニカル機能の発現に重要な役割を果たしています。

 これまでに、フォトクロミック分子や有機金属錯体の構造変化・相転移に興味を持ち、結晶学的な手法を駆使しながら、分子の構造−物性相関を明らかにしてきました。


Selected Publications

Synthesis, Photochromic Properties, and Crystal Structures of Salts Containing a Pyridinium-Fused Spiropyran: Positive and Negative Photochromism in the Solution and Solid State
Y. Funasako, H. Miyazaki, T. Sasaki, K. Goshima, M. Inokuchi, J. Phys. Chem. B, 2020, 124, 7251–7257.

Solid-State Photochromism of Salts of Cationic Spiropyran with Various Anions: A Correlation between Reaction Cavity Volumes and Reactivity
Y. Funasako, M. Ason, J.-i. Takebayashi, M. Inokuchi, Cryst. Growth Des., 2019, 19, 7308–7314.





外場応答性フィルム
Chromic Ionomer Films

 燃料電池に用いられる固体高分子電解質や、化粧品に添加される層状粘土鉱物は、イオン吸着能・輸送能などのユニークな特性をもつ機能性材料です。

 私達は、このような材料を、機能イオン固定化の「場」として捉え、ナフィオンや粘土鉱物などのイオン交換体に機能性イオンを内包させた、外場応答性フィルムの開発を進めています。

 これまでに、溶媒浸漬や光照射によって色変化を示すフィルムを見出しています。この方法では簡便に大面積の機能性フィルムを合成することが可能です。機能性分子がイオン雰囲気下でのみ示す特異的な外場応答現象の解明にも取り組んでいます。


Selected Publications

Photochromic nafion films containing cationic diarylethenes
Y. Funasako, S. Konishi, M. Inokuchi, J. Photochem. Photobiol. A, 2020, 402, 112831.

Photo-, Thermo-, and Piezochromic Nafion Film Incorporating Cationic Spiropyran
Y. Funasako, A. Takaki, M. Inokuchi, T. Mochida, Chem. Lett. 2016, 45, 1397–1399.